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10年たっても気に入って着続けられる服 新たなアパレルの形「10YC」 - 朝日新聞社

写真のTシャツは、「10YC(テンワイシー)」というブランドの製品。10イヤーズクロージングの略で、10年たっても気に入って着続けられることを目指した服なのだという。着てみてまず感じたのは、シンプルで着心地がとてもいいことだった。ポリエステル素材で、肌触りも悪くなく、体によくなじむ。このシャツならおしゃれ上級者の着こなしにも応えられる、きちんと作り込んだ服だと思えた。

10年たっても気に入って着続けられる服 新たなアパレルの形「10YC」

「10YC」

10YCの拠点は東京・墨田区。JR総武線の錦糸町駅から歩いて十数分の、地味で低いビル街の一角にある。社員は創業メンバー3人と、少し後から加わった1人を加えた4人で、みんな30歳になったばかり。分担を決めてすべての業務をまかなっている。みんな学校を出る前はファッションとは無縁だったが、就職した会社がアパレル会社と合併して、そこで体験して感じた服作りへの疑問が創業のきっかけだった。

製品開発と製造管理を担当している後由輝(うしろ・よしき)さんは、「新しい商品を季節ごとに次々と開発して、無駄が出るのに大量に作る。そんな商売の仕方が気に食わなかった」と語る。それならば、自分たちが納得できる服を作ろうと独立を決めたという。ブランドを立ち上げたのは2016年。国内の紡績、縫製、染めなどの生産現場を訪ねて構想を練り、資金はクラウドファンディングで集めての手さぐりの出発だった。

10年たっても気に入って着続けられる服 新たなアパレルの形「10YC」

「10YC」のメンバー

販売のためのECサイトなどの態勢を整え、まずTシャツからスタートしたのは翌年の12月から。買ってもらう対象は、自分たちと同じ20代後半~30代後半の、仕事の時にも私服の普段着で働く男性だった。着心地や耐久性、価格に限らず、それならば細部にいたるまで自分たちの思いを服作りに生かせる。また、北海道から九州までの各都市で毎週末にイベントスペースやホテルのロビーなどで製品の展示会を開き、そこで聞いた客の意見も取り込んだ。

サイトでは透明性を重視して、製作原価コストや関わる工場などを正直に公開した。それにより値段を抑えるために、アパレルとしては常識外に高い原価率50%の設定を守ることもできたという。

長袖TシャツはXSから5XLまでの9サイズ。色は白、黒、オリーブ、グレー、こげ茶の5色で、価格は税込みで約7500~8500円。ファストファッションのTシャツよりはかなり高いが、品質と完成度からすればお得な価格といえるだろう。夏に着る機会の多いTシャツはどうしても色あせしがちなため、染め直しのサービスを用意している。

シャツは立て襟とボタンダウンの2タイプで、色は白とネイビー。高級シャツの縫い方を採用したゆったりしたシルエットで縫い目も目立たない。サイズは6種。

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立て襟シャツ

フード付きのスウェットは9サイズで、色はグレー、黒、ネイビーの3色。和歌山にしかない編み機を使っていて、独特の風合いと着心地のよさで人気があるという。価格は税込みで約1万6千~1万8千円。

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フード付きスウェット。メンズ(左)とレディース

最近開発したデニムパンツは、経糸がストレッチの効いたポリエステル。新潟の紡績工場で製作して、滋賀の工場で洗い加工をかけている。どの工場も産地を回って見つけた工場で、独特の高い技術を持っているという。

10年たっても気に入って着続けられる服 新たなアパレルの形「10YC」

デニムパンツ

後さんは「10YCは製造業ではなく、作り手と着る人をつなぐ中間業者でしかない」と語る。こうしたやり方は、アメリカの「エバーレーン」などの先行例もある。しかし、アメリカにはない日本の高度な職人技を生かした工場で作られている点では、10YCのほうが格段にクオリティーが高いといってよい。

当初の想定はメンズだったが、もともとシンプルなアイテムでジェンダーレスなデザインを目指していたこともあり、女性の顧客が増えていて、最近は約3割になっているという。以前は一部を店舗に卸していたが、現在はコロナの影響などもあってネット販売に限っている。

10年たっても気に入って着続けられる服 新たなアパレルの形「10YC」

女性の顧客も増えている

いずれにしても10YCは、これまではなかった新たなアパレルの形だ。そして、ポスト新型コロナの時代にファッションもまた以前と変わらざるを得ないとすれば、このブランドは一つのあり方を示しているのではないかと思う。後さんは「色々と困難な時期もあったが、ぶれずに愚直に進んでいきたい」と語った。その言(げん)やよし、として期待したい。

PROFILE

上間常正

ジャーナリスト、ファッション研究者。1972年、東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社。記者生活の後半は学芸部(現・文化くらし報道部)で主にファッションを担当。パリやミラノなどの海外コレクションや東京コレクションのほか、ファッション全般を取材。2007年に朝日新聞社退社、文化学園大学・大学院特任教授(2019年3月まで)としてファッション研究に携わる。現在はフリーの立場で活動を続けている。

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September 14, 2020 at 07:45AM
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