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切ないことだらけの人生をしなやかに生き抜く秘訣【実家が全焼したサノ×倉重公太朗】第3回(倉重公太朗) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

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幼少期に実家が全焼したことを機に、切ない人生を送っているサノさん。学生時代はホストクラブで働き、卒業後はバーの経営をしていました。事業拡大を目指し大学院でMBAを取得するも、バーは売却することを決意。29歳で新卒のサラリーマンとして、広告会社で働き始めました。サノさんは仕事をきっかけにTwitterの投稿を始めたことで、そのクリエイティブな才能を開花していきます。

<ポイント>

・成功の秘訣は、1回の失敗にこだわりすぎないこと

・サノさんがTwitterをやる時に意識していること

・メンタルをしなやかに保つコツ

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■「誰もが可能性を信じられる社会」を作る

倉重:サノさんは「誰もが可能性を信じられる社会」を作りたいと仰っていますが、どうしてそう思うようになったのですか。

サノ:僕の家庭環境もあるし、ホストクラブやバーに来るお客さんの言葉にも影響を受けています。彼らは「どうせ私にはそんなのはできない」と口にすることがとても多かったのです。僕も子どもの時に「そんなことをできるわけがないだろう」とよく言われていました。僕はそれがなんだかもったいないと感じていて。

倉重:日本の教育はそうですよね。

サノ:「分相応に生きよう」という価値観が影響していると思います。世の中の制度的にも、1回失敗をするとはい上がってこられないと言われていますよね。でも、僕はそれ自体に懐疑的です。失敗しても、自己破産をしたり、生活保護を受けながらやり直せばいいじゃないですか。

そう思うものの、何となく「失敗をしたらまずい」という社会の空気感があるのはわかります。特にバーやホストクラブなど、僕のまわりにいた裕福でない人たちの間では、その空気が濃かったのです。「そんなことはない」と僕は思っていたのですが、なかなかそういう考えを変えられませんでした。

倉重:受験勉強で結構叩かれて、「この偏差値では志望校は無理だ」と言われる子もいます。志望校に行けなくて絶望したり、希望する会社に入れなかったり、いろいろなところで絶望をして、「自分はできない」と思いこんでしまう人がすごく多いのではないでしょうか。サノさんは「自分なんかできるわけはない」と思ってもいいような境遇なのに、すごく自分の可能性を信じています。どうしたらそうなれるのでしょうか。

サノ:自分の可能性を信じるための方法論をまだ僕の中で確立できていませんが、失敗を前提で生きることが結構大事だと思っています。「失敗してはいけない」というのは成功することが前提の考え方ではないですか。

倉重:確かにそうです。

サノ:でも、普通に生きていれば、いろいろな失敗は日常的にしているわけです。その1回の失敗にこだわりすぎないことはすごく大事だなと思っています。

倉重:そういう思考は昔からですか。

サノ:失敗だらけの人生だからこそ、そう思ったのかもしれません。

倉重:逆に境遇がこういう思考を育ててくれたかもしれないですね。話を戻すと、「お店を拡大しよう」と思って大学院に行ったのに、お店をやめてしまったと。

サノ:内定を頂いてから、お店は売却しました。

倉重:就職先は割とすぐに決まりましたか。

サノ:売り手市場だったので、そんなに苦労をすることはありませんでした。さらに、周りの就活生は大学生だけど、僕は社会人経験のある28歳ということもあり、相当なアドバンテージがあります。受けた会社はほとんど受かりました。

倉重:今は広告関係の仕事をされていて、29歳の時に初めてサラリーマンになったのですよね。どうでしたか、実際のサラリーマンは。

サノ:まず、「29歳新卒サラリーマン」というのがまずめちゃくちゃ浮きました。

倉重:同期とは7歳くらい違うわけですよね。

サノ:そうです。僕は比較的、顔が幼いほうなので、同期が僕を受け入れてくれた理由はそこにあると思います。これまでは童顔で、損をすることも多かったのですが、初めて得しました。あとは、年齢は当時29歳ですが、実力は22歳くらいだったのも、仲良くなれた理由かもしれません。

倉重:同期と同じ目線で働いたのですね。

サノ:そうです。「お世話になります」と「お疲れさまです」の違いから学びました。ホストクラブやバーは普通の常識とかけ離れた接客をするので、一般的な社会常識を学ぶ機会がほとんどありませんでした。例えば、ホストクラブだと、誰かがタバコを吸おうとすると、シュボっとライターを差し出しますが、サラリーマンはそんなことしません。名刺の渡し方もサラリーマンとホストの渡し方は全然違います。ホストは、ひざまずいて片手で名刺を差し出すので。

倉重:それを会社でやったらおかしいです(笑)。

サノ:頭がおかしいと思われてしまいますね(笑)

倉重:1年をしてみてどうでしたか?

サノ:最初の1年は新鮮で学びが多かったです。

倉重:今は何年目ですか。

サノ:今は3年目です。

倉重:Twitterを始めたのは社会人2年目からですよね。きっかけは何でしたか。

サノ:広告会社で働いているので、SNSなどのキャンペーン立案などもおこないます。当時はすでに30歳でしたが、一応2年目なので、若手の立場として、「Twitterでこういうキャンペーンをするけど、どう? バズる?」などと、クリエーターの先輩方から聞かれることがあります。僕は当時Twitterをしていなかったので、どうすれば「バズる」のか、検討もつきませんでした。何となく感覚論で話していたのですが、それは申し訳ないと思ったので、Twitterを始めてみようと思ったのがそもそものきっかけです。

倉重:それで今やフォロワー数6万人です。これはなかなか普通の人がいける数ではないと思います。

サノ:それに関してはテクニック論で増やしたというよりは、先ほどまで話をしていたような切ない内容のツイートをしていたら増えていったという感じですかね。

倉重:「こうすれば増えるよ」という話ではないのですね。

サノ:再現性はあまり高くないような気がします。

倉重:サノさんがTwitterで投稿する時に意識していることはありますか。

サノ:基本的に誰かを傷付けないようにしています。最初から気にしていることはそれだけです。「バズには、賛否両論必要だ」という人もいますが、僕はそうは思いません。誰かを批判するのではなくて、自分が主体になって呟いています。誰かを落とすなら自分を落とす。あるいは切ない話の中でもポジティブになれるような落としどころを見つけることを意識しています。

倉重:誰も傷付けないということですね。

サノ:そうです。そこは強く思っています。

倉重:Twitter経由でCMの仕事も来たのですよね。

サノ:Twitterをしていたおかげで、クリエイターの先輩方から「きみはCMを作るのに向いているかもしれないね」ということで、仕事をもらうようになりました。

倉重:今もクリエイティブ的な仕事をされているのですか。

サノ:今は営業とクリエイティブを半々くらいです。

倉重:Twitterの投稿を私も拝見しましたけれども、ちょっとした笑いや切なかった話を面白おかしく伝えることがすごく上手だなと思いました。

サノ:ありがとうございます。

倉重:つらいと思うことは、自分の中でどう消化をされているのですか。

サノ:現在進行形で本当にしんどいことは、そもそもつぶやきません。

倉重:投稿されているのは、全部自分で消化できたことなのですね。

サノ:そうです。消化できたものだけをつぶやいています。僕の中で、日常生活の中で消化できていない怒りはあります。

倉重:そういうのがあるのですか。

サノ:今はパッと思い浮かばないけど(笑)

倉重:幼少期からの話もそうですけれども、どれ一つをとっても普通の人にはかなりインパクトのある出来事が多いので、メンタルが強いというか、しなやかだと思います。

サノ:メンタルをしなやかに保てていないですよ。腹が立つ時は腹が立ちますから。

倉重:荒れる時もあるのですか。

サノ:暴れることはないのですが、1日不快だなと思うことはあります。ただ、寝たら若干気がまぎれる性質なので、嫌なことがあったら早く寝ています。

倉重:前回対談をした勝間和代さんも同じことをおっしゃっていました。寝るのは大事だと。

サノ:ムカつくのはたぶんどんな人でもムカつくと思います。寝て脳をリフレッシュさせるというのはいい解決法なのかもしれません。

倉重:あとは何かストレス発散法はありますか。

サノ:ストレス発散でいうと、コミュニティを複数持つことも大事かと思います。例えば会社で嫌なことがあって、それを会社の中で消化しようとすると、よりストレスがたまってしまうと思うのです。Aのコミュニティですごく嫌なことがあったら、BやCのコミュニティに逃げることで精神を回復させることが良いのではないでしょうか。

倉重:サードプレースやいろいろなところに、自分の居場所があると強いですね。

サノ:僕もいろいろな場所があることで救われている部分があります。

(つづく)

対談協力:実家が全焼したサノ

新橋で働くサラリーマン。幼少期に実家が全焼したことを機に、切ない人生を送る。学生時代はホストクラブで働き、卒業後はバーを経営。その後事業拡大を目指し、京大大学院でMBAを取得するもバーはつぶれてしまう。

Twitterでは「実家が全焼したサノ」というアカウントで毎日切なかった出来事を投稿している。

Twitter:@sano_sano_sano_

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