2人暮らしのかこじぃ(80)とかこばぁ(74)は最近、「人生会議」という言葉が気になっている。兵庫県加古川市では昨年、人生会議を題材にした創作劇が評判を呼び、厚生労働省がお笑い芸人を起用して作ったポスターは「不謹慎だ」と批判されて話題になった。どういう意味なんだろう。西村医院(同市野口町水足)の稲岡雄太医師(35)に聞いてみた。
かこばぁ 人生会議とは大げさな名前じゃのう。
稲岡さん アドバンス・ケア・プランニングの愛称ですが、そんなに堅いことではありません。人生の終末期をどのように迎えたいのか、前もって医療やケアなどについて、家族や友人、医療関係者らと話し合っておくことです。
亡くなる人の3分の2が、自分の最期を自分で決められていないというデータがあります。その場合、家族が代わりに決めることが多いのですが、どうしたらいいか分からなければ本人にも家族にも不本意な結果になりかねません。
かこじぃ 人生の最期なんて想像でけへんなぁ。
稲岡さん 例えば心不全で急に体調が悪化すれば、自分の意見が言えなくなることがあります。人工呼吸器を付けるのかどうか。食べられなくなったら胃ろうにするのか、点滴にするのか。「孫の結婚式まで生きたい」というのが分かっていれば、点滴で頑張りましょうかという判断もできます。
かこばぁ そんなこと言われても、何から話したらええんやろ。
稲岡さん 好きな食べ物や音楽からでもいいんです。ワークショップ(講習会)をするときは「最後の晩餐(ばんさん)は何にしますか」と問い掛けます。「誰とどこで食べたいですか」とさらに聞いていくと、その人の価値観が見えてきます。
また、過去にどんなことがうれしかったか、楽しかったかを話し合ってもいいでしょう。思い出を振り返って、これから何が不安なのかを聞くことにつなげていきます。お金のこと、家族のことが不安とかでもいいんです。何を大切にしているのか、分かってきます。家族が「えっ、そんなこと思ってたん!」と驚くことがあるかもしれません。
かこばぁ それくらいやったら、できそうやなぁ。
稲岡さん これをしてほしい、してほしくないというのを決めておくことだけが大切なのではなく、話し合う過程が最も重要です。人生の最期には、正解を見つけようとしがちなんですが、価値観を共有しておけば、どうしてほしいのかが推測でき、本人や家族らが納得できる最期を迎えられます。
かこじぃ 人生会議は、いつやればいいんじゃ。
稲岡さん 日常的に話し合うことが理想ですが、入退院や新しい病気が分かったときなどが人生会議を始めるきっかけになります。大切なのは1回やって終わりではなく、何回も重ねることです。体調や家族の状況などが変われば、その人の気持ちも変わります。誕生日やお正月、お盆など、家族が集まりやすい日を「人生会議の日」と決めておけばいいでしょう。
かこばぁ 子どもを呼んで、早速やってみようかのぉ。でも「縁起が悪い」て言われそうやなぁ。
稲岡さん 私も含め、人は必ず死にます。なのに、何も準備しなくていいのかということです。降水確率100%なら絶対に傘を持っていくでしょう。人生会議は、その傘のようなものです。「どう死ぬのか」ではなくて、「どう生きるのか」と前向きに捉えて、気軽に話し合ってみてください。(まとめ・斉藤正志)
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April 24, 2020 at 03:30AM
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人生会議ってなに? かこじぃ、かこばぁの知恵袋 - 神戸新聞
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