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大竹しのぶ、間違いだらけの人生 - 朝日新聞社

 1974年のデビュー以来、唯一無二の存在感と圧倒的な演技力を発揮し、ほとんど途切れることなく舞台に立ち続けてきた大竹しのぶ。彼女が自粛明けの初舞台で演じるのは、不朽の名作『女の一生』の主人公・布引けい。“誰が選んでくれたものでもない。自分で選んで歩きだした道ですもの。間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ”という名セリフに強く共感したという大竹は、自身の人生を「間違いだらけだった」と振り返る。それでも、優しいまなざしで「これで良かった」と微笑む彼女にその真意を聞いた。

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■戦時中も公演していた『女の一生』「コロナ禍の今、この幕を開けるのには意味がある」

――『女の一生』の出演が決まった際はどのようなお気持ちでしたか。

【大竹しのぶ】 日本の演劇界を牽引してきた女優・杉村春子さんが947回にわたって演じられた役ということや、どういう物語なのかというのはなんとなく知っていましたが、まさか自分にお話がくるとは思っていなかったので驚きました。

――お稽古は9月の終わり頃から始まったそうですが、久々の稽古場はいかがでしたか?

【大竹しのぶ】 マスクで相手の表情がよく見えないことや、自分の声の飛び方がわからないなど色々と戸惑うことも多かったのですが、最近ようやく慣れてきたように感じます。役者だけじゃなくアクリル板の設置や一回ごとの消毒など、スタッフの皆さんも本当に大変だなと。ただ、やはり稽古をしている時間というのは全員と心を通い合わせることができるので、凄く集中して、良い舞台にしようという気持ちが高まります。稽古を重ねれば重ねるほど演じる喜びを感じますし、一人の女性の40年間を描いた舞台なので、世代ごとの感情の変化を表現するのが凄く楽しいです。

――激動の時代を生きた布引けいという役に共感した部分があれば教えて頂けますか。

【大竹しのぶ】 けいの台詞で「誰が選んでくれたものでもない。自分で選んで歩きだした道ですもの。間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ」というのがあるのですが、そこに彼女の強さを感じて凄く共感できました。時代関係なく、けいのような選択をして生きてきた人が沢山いるはずで、きっとこの言葉は多くの人に響くのではないかなと思います。

――けいの台詞に限らず本作には美しい言葉が沢山詰まっていますよね。

【大竹しのぶ】 森本薫さんが書かれた脚本には宝物のような台詞が沢山あります。けいが20代の頃には若さを感じさせる台詞もあってとっても素敵なんですよね。この舞台の初演は昭和20年ですが、同じ脚本を令和という新しい時代に公演できるというのは本当に凄いことだなと思います。良い脚本は時代を超えて受け継がれるものなんだと強く実感しています。

――コロナ禍の今だからこそ『女の一生』の公演をやることの意味がより深まったように感じますがいかがですか?

【大竹しのぶ】 それこそ、杉村春子さんが戦時中に舞台に立っていた頃は警戒警報(空襲の恐れがあることを知らせる警報)が鳴るかもしれないという状況で、それでも上演したいという気持ちを持ってお芝居されていたと思うんです。今は戦時下ではないので同じように語るのは違うのかもしれませんが、コロナという世界中が大変な状況に陥っている中で、この舞台の幕を開けるのには意味があると思いたいですね。

■「辞めたいと思ったことは一度もない」コロナ禍で改めて感じた“舞台に立つ喜び”

――自粛期間中はあらゆる舞台が公演中止となり、大竹さんが出演される予定だった『桜の園』も全公演中止となってしまいました。そんな中でどのように過ごされていたのでしょうか。

【大竹しのぶ】 自粛期間中に劇場が封鎖されたのは仕方がないことで、状況をしっかりと受け止めつつも、あまり色々と考えないようにしていました。様々な公演が中止になる中、配信という形で舞台を上演されるカンパニーもありましたが、演劇に関しては個人的には“お客様の前でお芝居するのが一番”という思いがあったので、今年がダメでも来年、来年がダメでも再来年というふうに、いつか絶対に舞台の幕が開くことを信じてゆったりした気持ちで生活していたんです。もちろん、これから世界はどうなっていくのかと考えることはありましたけど、そんな中でも、朝起きたらご飯を作ってお掃除して、何日かに一回スーパーに行ってという、ごく普通の日常をありがたく噛み締める日々を過ごしていました。それはそれで楽しい時間だったように思います。

――本舞台の公演が決まった時は“やっとお芝居ができる!”と、喜びの気持ちでいっぱいだったのではありませんか?

【大竹しのぶ】 それが、ずっとダラダラモードで過ごしていたせいか、公演が決まったと聞いた瞬間は“どうしよう!”って感じだったんです(笑)。でもお稽古に入ってからは舞台に立てる喜びでいっぱいになりました。

――デビューから途切れることなく多方面でご活躍されていますが、長く続けていく中で“もう辞めたい”と思うことはなかったのでしょうか。

【大竹しのぶ】 たまに身体的な“疲れ”を感じることはありますけど、もう辞めたいとか二度と舞台に立ちたくないと思ったことは一度もないです。何故かというと、お芝居が好きだから。舞台中は開演時間までに自分の体がアップしていく感じも好きで、幕が上がると顔も体も一番良い状態になって“生きてる!”と実感できるんです。それがある意味モチベーションになっているのかもしれませんね。

■ターニングポイントは“結婚と出産”「イメージのためにプライベートを抑制することはなかった」

――そんな大竹さんにとって、人生のターニングポイントと思える時期はいつだったのでしょうか?

【大竹しのぶ】 大きなターニングポイントになったのは、やはり結婚や出産ですね。自分のイメージのためにプライベートで何かを抑制することはなかったですし、人生の中に役者という仕事があるだけなので、結婚したい時に結婚して、自然な流れで出産して、離婚したい時に離婚したといいますか(笑)。役者のお仕事をプライベートよりも優先するということはなかったように思います。

――役者というお仕事と、主婦業や子育てとの両立に苦悩されたことはありませんでしたか?

【大竹しのぶ】 母親として100点だったかというとそうではなかったですし、だからといって役者としても勿論完璧ではなかったし、睡眠不足のまま朝早く起きて子どもの身支度をして、それから仕事に出かける日々だったので、どちらかに全てを注ぎ込むというのは不可能だったんですよね。それでも、両立させるために必死になってやっていたとは思います。もちろん“これで良かったのだろうか?”と葛藤することもありましたけど、自分で選んだ人生だし、大変なことがあったぶん、楽しいこともいっぱいあったのではないかと。前述のけいの台詞じゃないですけど、過去を振り返った時に“あれで良かったんだ”と思うようにしています。

――これまでの選択は間違いじゃなかったと思うと前向きになれますよね。

【大竹しのぶ】 ほんとにそう。だって間違いだったとわかったら悲しいじゃないですか。そんなの辛いです。私も間違いだらけの人生でしたけど、例え間違った選択をしたとしても、“これで良かったんだ”と思えたほうが幸せですよね。

――役者として輝き続ける一方で、バラエティ番組などでは自然体で飾らない姿が素敵な大竹さんですが、ご自身の中で何か大事にしてらっしゃることはありますか?

【大竹しのぶ】 亡くなった父がよく「女の人はいつもニコニコ笑って、可愛く愛されなくちゃいけない」と言っていたので、その言葉に従って笑顔でいることを心がけていた時期もあったのですが、大人になるといつもニコニコしていられないということがわかってきます。色んなことを学んでいくのが人生で。年齢や時代によって刺さる言葉も違うし、誰かの言葉や、それこそ映画や舞台の台詞が刺さることもありますよね。だからいつも言葉には敏感でいたいし、それを感じ取れるような心も持っていたいなと思います。それから、自分の心に嘘をつかないということも大事にしています。

――今後、役者として挑戦してみたいことはありますか?

【大竹しのぶ】 ミュージカルや音楽劇に挑戦してみたいですし、小劇場の舞台にも興味があります。演劇は娯楽ではあるけれど、お芝居を通して素敵な生き方や素敵な人物に出会えたりすることもあるんですよね。『女の一生』はまさにそういうお芝居になっていると思います。そして来年は舞台『フェードル』で恋に狂う女性を演じるので、是非そちらも楽しみにして頂けたら嬉しいです。

(取材・文=奥村百恵)

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