岡山県に住む足立昌大さん(仮名・45歳)は、なんとこれまで25回もの転職を繰り返している。履歴書をかけば、2ページは使ってしまう長い職務経歴書ができあがる。現在は無職で実家住まいの彼。なぜ彼は人生の中で、これほどまでに転職を繰り返してしまったのか。
◆「人生すべてが黒歴史」
足立さんとは、電話での取材になった。筆者宛にSNSで連絡をもらった時には、どんな人なのかと不安だったが、いざ話してみると口ぶりは明朗で質問に対する回答も的確だ。コミュニケーションに大きな問題があるようには感じない。
「人生45年間、全てが黒歴史だったと感じています。その中でも特に、学生時代のことは思い出したくもないです。人間関係を構築することが極度に苦手で、中学校から専門学校にかけては友人と呼べる存在もほとんどいませんでしたし、異性に関しては母親以外と話したことがないような状態でした」
私立の中高一貫校で青春を過ごしたという足立さん。勉強は好きではなかったというが、偏差値を調べてみるとそう低いというわけでもない。
「社会に出てすぐに役に立つことを勉強しようと思い、専門学校に進学しました。最初は正社員として、損害保険の代理店に就職しました。しかし、最初の仕事は2か月で退職しました。そのあと数十年間にわたって、契約社員や派遣社員としての仕事を転々としました。運良く続く仕事は2〜3年頑張ることもできましたが、1〜2か月で耐えられなくなる職場もたくさんありました」
8回目の転職の時に、精神疾患と診断されたという。当初はうつ病として扱われたが、現在は「広汎性発達障害」として、障害者手帳も取得しているそうだ。
◆“あいまい”であることがどうしても許せず…
「若い頃は、転職するならなるべく長く続けたいという決意を胸に働きました。今度こそ乗り越えていかなきゃ、とは思うのに、いつもいろいろなことがうまくいかないんです。自分では理由をうまく説明できないけれど、とにかくそりの合わない上司がいる職場は、どうしてもストレスを我慢できなくなる。業務内容が自分にとって難しい内容である時もあります。工場、コンビニ店員、ファミレスの皿洗い……そんな仕事でも続かないこともありました。
マニュアルがしっかりしていなかったり、上司が教えてくれる内容が“あいまい”であることがどうしても許せない。それで発狂してしまいそうになることもありました。転職活動をするにも、面接がどうにも苦手。志望動機を聞かれた時に、心にもないことを言うことができず、落ちた会社もたくさんある。だから病名がついた時は、自分の今までの振る舞いのすべてに納得がいき、救われたような気持ちになりました」
あいまい表現が苦手なのは、広汎性発達障害によく見られる性質の一つだ。人間関係的にも職務内容的にも、自身にとって我慢しがたいことが多く、いつしか正社員で働くということは諦めてしまったという。
◆両親の介護と向き合いながら、地元で終える人生
そんな足立さん、ご両親はすでに70代になっており、今後は介護なども検討していかなくてはならないという。
「自分にできる仕事を探し求めて、2020年7月、東京でタクシーの運転手として働くために上京しました。しかしその後すぐに母親が倒れてしまい、1か月と働かずに地元に戻ってきました。もっとも、コロナ禍の東京におけるタクシー業界は想像以上に閑古鳥が鳴いている状態で、歩合制で働くにはあまりに難しそうだったので、ある意味地元に戻ってきてよかったのかもしれませんが……。幸い母も大事に至るような状態ではありませんでしたが、年齢も考えるといつどうなるか分からない。母の不調を受け、もう今後は地元以外の土地で暮らすことはないのだろうなと思っています」
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September 03, 2020 at 06:53AM
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