アフリカのファッションがぼくらの想像するよりもずっとはやく業界の勢力図を書き換えそうだ。少し前に“世界一お洒落な男たち”といわれたサプールが話題になったと思ったら、昨年には南アフリカ人デザイナー、テベ・マググがLVMHプライズの大賞をアフリカ人ではじめて受賞した。ナイジェリアのケネス・イズもセミファイナリストに残ったから、突発的な天才があらわれたという話ではない。確実に、層としての厚みを増しているのだ。
この流れと前後するかたちで日本でも動きがみられた。ユナイテッドアローズが2014年に立ち上げたテゲ ユナイテッドアローズ、そして日本とアフリカのファッションをつなぐプロジェクトのFACE.A-Jがそれだ。いずれのプロジェクトにも深く関わっているのが栗野宏文である。
「エスニックの文化・芸術を扱うパリのアフリカ・オセアニア美術館を訪れてそれはそれは感動しました。たしか1980年代後半のことだったと思うんですが、わたしははかり知れないポテンシャルを感じました」
栗野が訪れた国々ははやくも5つにのぼる。「エリトリアの縫製工場を視察しましたが、技術指導が入ればすぐにでもものになる地力を感じた。かれらがハッピーになれる後押しができればと思います」。
アフリカといえばライオンに腰蓑─21世紀になったいまなお、ステレオタイプなものの見方がはびこっている。いつかそういう“不理解”を正したいと思っていたと栗野はいう。
そうしてアフリカの土をいよいよ踏んで、期待は確信に変わった。
「去年の秋、ナイジェリアのラゴスでファッションショーを行いました。舞台はアララというブティック。ひと言でいえば、真正のインターナショナル・ブティックだった」
ラゴスだけでアララのほかにも数軒は栗野の琴線に触れる店があったというからマーケットとしても侮れない水準にあることが想像できる。
「それほどの店があるんですから、デザイナーの地力は推して知るべしでしょう。たとえばケネス。そのスカーフはたいへんに美しいものでしたが、圧巻は鶴の恩返しのような(笑)手織機。原材料は木で、簡素なつくりだからバラして持ち運ぶこともできる。世界一進んだエコ・コンシャスなものづくりですよ」
栗野も舌を巻かざるを得なかったのが色に対する鋭い感性だった。
「ケネスのスカーフはいわずもがな、市井のおばちゃんからして飛び抜けています。出会った女性に尋ねてみました。毎朝着る服を考えるんですか、と。彼女はこともなげにいいました。着たい服を着ているだけよって。敵わないですよ(笑)」
そして服の奥底にたしかに感じられた、シャーマニズム。
「ほんらい服とは着る人に勇気を与えたり、誇りを感じさせてくれるもの。シャーマニズムに通じるスピリチュアルな部分をもっていたものだったんです。つまりアフリカの服はぼくらが忘れてしまったものを呼び覚ましてくれるんですね」
栗野はアフリカの健全な成長だけを願っているのではない。その活動を通して、ファッションの根っこを植え直そうとしているのである。
ラゴスのShop「アララ」
タンザニア出身の建築家デイヴィッド・アジャイが手がけたアララ。「この店の秀でたところは自国の文化を積極的に採り入れている点にあります。ビーズやレザーを使った什器がそこかしこに飾られた店づくりはもちろん、品揃えも、サンローランやルブタンの横にケネスやテベといった地元のデザイナーの服をセンスよく並べ、そうしてオンリーワンの存在感を発揮していた。80年代のブラウンズやバーニーズを見たときくらいの衝撃がありましたね」 12a Akin Olugbade St, Victoria Island, Lagos, Nigeria http://alaralagos.com/
PROFILE
栗野宏文
UNITED ARROWS 上級顧問
1953年東京都生まれ。和光大学卒業後、鈴屋、ビームスを経て1989年にユナイテッドアローズの創業に参画。現在は日本にとどまらない活躍をみせる業界の第一人者。若手ファッションクリエーターの育成、支援を目的として2013年に設立されたLVMHプライズではそのスタートから外部審査員を務める。2004年には英国王立美術学院から名誉フェローを授与された。
Photos エリック・ミコット Eric Micotto
Words 竹川 圭 Kei Takegawa
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June 06, 2020 at 07:04AM
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