洗濯してもダメ、着てもダメ。いったいどうすれば…。
アクリル、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維でできた衣服を洗濯すると、何十万ものマイクロプラスチック繊維が引きはがされてしまいます。最近の研究によると、合成繊維の衣服を着ているだけで、洗濯するよりも多くのマイクロファイバーが放出される可能性があるそうですよ。
Environmental Science and Technology誌に発表された研究結果によると、ポリエステル製の衣服を着て、ただ普通に生活するだけで、数時間もすれば洗濯するのと同じ量の繊維汚染が発生してしまうのだとか。
研究論文の筆頭著者で、イタリアの高分子・複合材料研究所の研究者であるFrancesca De Falco氏は、声明でこう述べています。
水と大気、それぞれに合成繊維がバラまかれている証拠はたくさんあります。なので私たちは、衣類からその両方に放出されているマイクロファイバーについて、同時に研究することにしたんです。
ポリエステル製の服を着ているだけで、洗濯する3倍のマイクロプラスチックをばらまいている
研究では、4種類のポリエステルと、ポリエステルを混合した衣服を対象に調べました。摂氏40度のぬるま湯で衣類を一つ一つ洗って繊維の放出量を測定したところ、1gあたり700〜4,000個のマイクロファイバーが、一度の洗濯サイクルではがれました。
また、研究チームは4つの衣服の複製を着たボランティアたちに、日常生活と同じような動きをしてもらった結果、わずか20分で1gあたり最大400個のマイクロファイバーが空気中に放出されることがわかりました。つまり、ポリエステル製の服を着て通常の生活を3時間20分続ければ、4,000個のマイクロファイバーが放出され、洗濯時に水を流すのと同じくらいの汚染が生じるというわけです。もっと大きなスケールで考えると、平均的な人は洗濯によって毎年約3億個のポリエステル繊維を放出し、ポリエステル製の衣服を着るとその3倍の繊維を放出してしまうらしいですよ。
ちょっと待って。普通は着たあとに洗濯しますよね?ということは、3億×3+3億=12億! 気が遠くなってきた…。
海洋生物の安全を脅かすマイクロプラスチック
衣服を洗濯することで生じるポリエステル、アクリル、ナイロンの破片はかなり小さく、下水処理場で引っかかることなく通りすぎてしまいます。その後、川や海で毒素を放出して、海洋生物を危険にさらします。また、衣服から空気中に放出されたマイクロファイバーを吸い込んでしまうと、健康を害する可能性もあります。最近の研究によると、大気中のマイクロファイバーは最終的に海にも辿り着いてしまうようなので、私たちのファッションの選択が、海洋生物の安全を脅かしているともいえます。
最大の問題は大量生産。温暖化に影響も
現在世界中で販売されている衣料品の半分以上がポリエステルを使用しているため、消費者の選択だけでこの問題を解決することはできません。
マイクロファイバーの放出量を減らすことを念頭に置いて衣服をデザインすれば、汚染を抑えることができます。たとえば今回の研究によると、ポリエステルと綿の混合衣類の方が、ポリエステル100%よりも多くの汚染物質を放出するそうです。また、よりタイトに織られたり、きつく巻かれた糸を使ったりした衣類は、空気と水の両方に放出される繊維が少ないという結果が出ています。これらの結果をデザインに活かすことはできるはずですよね。
また、やめようと思えば、ポリエステルやアクリル、ナイロンでつくられた衣類の大量生産をやめることもできるはずです。壊滅的な気候変動を避けるためにも、これらの素材の元になっている化石燃料を地中にとどめておくべきです。他の衣類が完璧というわけではありません。たとえば、綿の生産には、ポリエステルよりも多くの水を使用します。それよりなにより、全体的にみて世界の衣料生産量は多すぎ。2000年から2014年の間だけで生産量が倍増しちゃってます。地球上のすべての生命のために、大量生産を見直すのは可能だと思います。
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March 29, 2020 at 08:00PM
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