世紀の一戦に将棋界の「魔王」が登場だ。棋士の中でも屈指の競馬通として知られる渡辺明名人(36)が本紙でジャパンCの予想を披露。棋風と同じ理詰めの予想で、本命には無敗の3冠馬◎(6)コントレイルを指名した。馬券は〇(5)デアリングタクトとの馬単(6)(5)1点と、△(13)ユーキャンスマイルを加えた3連複(5)(6)(13)で勝負する。
私は競馬ファンでありプロ野球ヤクルトのファンでもあります。今年、名人位を初めて獲得した同じ日にノーヒットノーランを達成したライアン小川投手と「丸ごとスワローズ」で対談。その縁もありジャパンCを予想することになりました。
競馬は一番長く続けている、これだけはやめることが考えられない別格の趣味。その面白さは、予想が難しくて考えがいがあるところです。
府中に住んでいたときは、ジャパンCに参戦する外国馬の公開調教をよく見に行きました。今年は外国馬の参戦は1頭ですが、3頭の3冠馬が激突。しかもアーモンドアイがこのレースで引退するので、一度限り。将棋に例えるなら、藤井聡太二冠が往年の名棋士、大山康晴先生や中原誠先生と一度だけ対局するドリームマッチのようなものでしょう。
私の予想は将棋と同じで理詰め。そこから導き出した本命はコントレイルです。無敗の3冠馬が実力的に上位と読みました。皐月賞、ダービーともコントレイルの2着だったサリオスが、初めて年長馬と対戦した毎日王冠を楽勝。現3歳牡馬のレベルが高いことを証明しました。中4週での出走だけにどこまで状態が戻るかだけが心配でしたが、今週になって陣営のトーンが上昇。それなら力を信頼します。
対抗はデアリングタクト。現3歳牝馬のレベルが証明されていないぶん、コントレイルより上に取ることはできません。とはいえ、3歳時に出走したジェンティルドンナ、アーモンドアイの3冠牝馬がともにジャパンCを制覇。斤量53キロが有利に働いているのでしょう。鋭い末脚を使えるのも魅力です。
アーモンドアイは無印にしました。昨年の有馬記念では9着と馬群に沈み、安田記念も負け、前走の天皇賞は勝ったとはいえ、後続に詰め寄られました。往年の力がないのなら、現時点での力はコントレイルが上とみています。(2)番という内枠も今年はマイナス。先週の東京芝の競馬を見ていると、内をあけてのレースが目立ちました。内ラチ沿いを走れないとなると内枠の有利性は薄れ、しかも馬群全体が外へ行くため壁をつくれず、外に出せないという厳しい競馬になりそう。同じ理由から最内枠のカレンブーケドールも無印です。
内枠に有力馬がそろったことから、仕掛けが早くなる競馬になりそう。展開を考えると、3着は強力な差し馬が外から突っ込んできそうです。(13)番を引いたユーキャンスマイルを狙います。昨年のジャパンCは道悪、今春の天皇賞は内を突いたのが敗因で、前走は叩き台。まともな競馬ができれば、確実に末脚を伸ばせる馬です。
馬券は(6)(5)の馬単が本線で、あとは(5)(6)(13)の3連複のみを買います。 (将棋棋士・名人)
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■渡辺 明(わたなべ・あきら)…1984(昭和59)年4月23日生まれ、36歳。東京都葛飾区出身。所司和晴七段門下。小1で将棋を始める。2000年3月に四段昇段を決め、史上4人目の中学生プロ棋士に。04年、当時年少3番目となる20歳8カ月で初タイトルとなる竜王位を獲得。現在は、名人・棋王・王将の三冠。通算タイトルは歴代5位の26期(竜王11期、名人1期、王座1期、棋王8期、王将4期、棋聖1期)。愛称は「魔王」。趣味はフットサル、カーリング。家族は夫を題材にした漫画「将棋の渡辺くん」(講談社)を発表している夫人、伊奈めぐみさんと1男。
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