ファッションは、写真を通してイメージが伝わっていく。その切り離せない関係に焦点を当てた「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」展が、東京都写真美術館で開かれている。誰が、いつ、どこで、どのように着るのか。まとう人間や背景によって、かたちや意味が変容するというファッションの特性も浮かび上がる。
雑誌が作った潮流/SNSで発信
写真とファッションを考える上で雑誌は欠かせない。1990年代には、大衆向けというより個人的な視点を重視した仏カルチャー誌「パープル」など、雑誌や写真家が新たな潮流を作った。
「パープル」に多く発表した写真家アンダース・エドストロームは、マルタン・マルジェラ作品の撮影も手がけた。モデルがばっちりポーズを決めるのではなく、腕を組み会話するなど自然な姿をとらえている。エドストロームは街で、歩く人やおばあさんの背中も写す。足さばきで生み出されるスカートの開き具合や、こんもりとしたニットの丸みは造形作品のようだ。肉体を伴うことで、服単体とは違う新たな美を帯びる。
90年代の東京を舞台にしたのが高橋恭司だ。雑誌の特集の1枚として撮った「Tokyo Girl」は、ポップな花柄の服を着た女性。細めの眉には時代を感じるものの、作品は今も新鮮に映る。風景写真とともに展示され、街や時代の空気感が立体的になる。
2000年代以降、ネットが普及し、写真とファッションの関係はさらに変化する。ホンマタカシ撮影の「Images」は、東京ブランドのパグメントとのコラボ。ミリタリーウェアを着た若者を、パグメントがインスタグラムで探して集めた。背景をよく見ると、ある地名に気づく。この土地でミリタリーウェアを着るとは? おしゃれとは違う文脈を急にはらむ。
本展は編集者の林央子(なかこ)が監修。企画した伊藤貴弘学芸員は、写真とファッションの関係性について「SNSなどで結びつきは強くなっていると思うが、写真が刹那(せつな)的に消費されたり個人の承認欲求に使われたり、より混沌(こんとん)としている。ただ、新型コロナウイルスの影響で揺り戻しもあるだろうし、変わらず消費される部分もあるだろう」と話す。
7月19日まで。月曜休館。一般800円、学生700円など。
実物とイメージ、差に向き合い受け入れる
パグメント、大谷将弘・今福華凜
パグメントは、ブランドがこれまでに発表してきたコレクションの「材料」と「作り方」を作品とともに紹介するインスタレーション「Materials and Recipes」も出品。ちまたにあふれる画像や文字を制作過程に取り込み、身体との関係を考えるという実験的な服作りを続けている。
大谷将弘(30)と今福華凜(かりん)(29)が2014年に東京で結成。2人は別の美術大学で油絵を専攻した後、文化服装学院でそれぞれファッションを学んだ。
既存のイメージを服にとり入れる手法は、例えば、パリ・コレクションの動画を使う。モデルの画像から服部分を切り取り、自分の体の大きさに合わせて紙に印刷し、紙の服を着る。その姿を自撮りした画像を、今度は布に印刷して服を仕立てる。他にも、路上に落ちた服、日本服飾史からキーワードを調べて集めた画像、など題材は様々だ。
なぜ画像を使うのか。学校の服作りで自分の体をスキャンした際に生じた違和感からだと大谷は言う。「自分は鏡や写真でしか見られない。実際の物質を伴った身体と、イメージの自己像はずれている。その二つが重なったりずれたりする状態が私では。それを一番リアルな身体として服を作りたい」。今福も「現実とイメージの差を埋めるというより、差に向き合い、受け入れるための服」と話す。
コロナで服作りへの意識も変わった。人と服の関係性に思いを寄せる。大谷は「一つの服が自分にとって大事なら、新しい服をどんどん買おうと思わないし、多少高くても欲しいと思える。『人と服の関係を浅くしていかに消費量を増やすか』という今のシステムから、早く抜けたいという意識が生まれた」。
(神宮桃子)
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June 27, 2020 at 08:00AM
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