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憎くて大切な人生のパートナー 関係、考え直す時とは - 朝日新聞

 その存在が心の支えになる時もあれば、そばにいるからこそ憎い時もある。新型コロナウイルスの影響で、「パートナー」の存在をいつも以上に意識した人も多いのではないでしょうか。人は誰でも体験を重ねて変わります。パートナーとの関係もまたしかり。互いの距離を変えたい時、誰かと出会いたい時、それぞれの選択を考えます。

「仲良くいるため離婚」

 都内の会社役員の女性(39)は、2年前に約10年連れ添った夫と離婚。しかしその後も、小学生の子供たちと家族4人の暮らしを続けています。「これからも仲良しでいるために、夫婦関係はおしまいにしました」と女性は言います。

 元夫との関係が変わり始めたのは数年前。女性が勤め先から幹部職を打診されたのがきっかけでした。

 それまで女性は時短勤務をしていました。「もっと仕事がしたい」と思っていて、このチャンスを喜びました。一方、管理職の元夫は、毎日深夜や朝に帰宅する働き方に疲れ切っていました。

 そこで夫婦で話し合い、互いの役割を交代することに。元夫は退社して独立し、家で仕事をしながら家事育児を主に担う。女性は外で働く時間を増やし、稼ぎも逆転しました。

 元夫は家事育児を献身的にこなしましたが、仕事での成長意欲を失っていきました。互いの役割は今後も状況に応じて変えようと約束していましたが、お金の話は女性に任せきりに。元夫がともに家計を担う気がないことが分かり、女性は違和感を募らせました。

 「私が大黒柱だという気概で頑張っていましたが、ふと、この人のためにずっと働き続けるのかと思い、ぞっとしたんです。一方で、それならばと家のことを当然のごとく彼に押し付けている自分にもぞっとしました」と女性は言います。

 パートナーとは互いに自立し、高め合える関係を望む女性は、「子供が巣立ったあとも一生一緒にいるのはつらい」と思うように。夫婦仲も次第にギスギスしていきました。

 夫婦で話し合いの末、離婚を決意。しかし、子供たちが自立するまでは今の生活を続けようと考えました。「彼は子供が大好きだし、子供も彼が大好き。良き父であり、子育ては一緒にしたかった」と女性はふり返ります。

 約半年の話し合いを経て、離婚が成立。互いに納得のいく結論を出すために弁護士も入れて、協議書を作成しました。元夫は当初反対しましたが、最後は「子供のためにも、自分も自分の足で立ったほうがいい」と離婚を受け入れました。

 離婚後、元夫は家事にも仕事にも以前より主体的に関わるようになったと女性は感じています。女性にとって元夫は「人生の一時期夫婦だった戦友かつ親友であり、子育てのパートナー」。子供たちが自立したら円満に別々の道を歩むつもりです。

今も好き?経済的には? 「離婚か修復か」相談に乗る 岡野あつこさん

 離婚か関係修復か。カウンセラーの岡野あつこさんは、東京都内の女性Aさん(50代後半)からの相談を受け、このように助言しました。

 Aさん 夫と別居する準備を始めています。まじめに自営業をしていた夫は、仕事が一段落したのをきっかけに若い女性がいる店に通うようになり、特定の女性と深い仲になりました。探偵も頼みました。夫は「申し訳ないけどやめられない」と言うのです。

 岡野さん 離婚するかどうかの判断は、「損か得か好きか嫌いか」、シミュレーションをすることです。自分で生活費を稼いでいけるのかどうか。親が援助をしてくれるのか。「もうこの人とは一緒にいたくない。この人が死んだら喜ぶ」という気持ちなのでしょうか。

 Aさん 私は夫の行動に深く傷つき、「今までのようにお世話はしたくない」と思っています。周囲からも「別れれば?」と言われています。でも「今までの幸せの貯金」があるので嫌いにもなれず、離婚したいとは思いません。

 岡野さん Aさんは夫に対する気持ちが残っていますし、経済的にも離婚すると損になりますね。

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 岡野さんはAさんには離婚を勧めませんでした。最近は長年連れ添った夫婦が離婚しないものの、別居、あるいは互いに干渉しない同居を続ける「卒婚」も注目されています。岡野さんも「家庭内別居や離婚を前提とした別居と違い、『卒婚』は自立のニュアンス。頑張れるし、安心もできる。呼び方一つで変わります」といいます。

 ただここでも重要なのは経済的な判断。岡野さんは「夫が愛人に貢いだり、新しい仕事に投資してしまったりする場合は、離婚して財産を半々にすることをお勧めします」。

 また、離婚を決意しても、「期限を切って相手に優しくしてあげてみてください」とも。「その間に相手が変われば離婚せず、変わらなければ離婚です」

 一方、男性からの相談も4割を占めています。30~40代が多く、「自分はパートナーではなく、ATMだと思われている」「父親としては認められているが夫ではない」。そんな時、認めてくれる女性が現れると「別れたい」となるそうです。

 「生活費を稼げる男性には、あまり離婚のメリットはない」と岡野さん。離婚すると財産の半分を失い、子どもも奥さんに連れていかれるケースが大半とか。「それでも離婚を言い出すのは、愛人から『奥さんと別れて』と言われたケースや、奥さんの浮気や家出のケースです」と岡野さんはいいます。

 岡野さんによると、男性にとって離婚するかどうかの判断は「その人が幸せになるかどうか」。愛人がいる人には「本当にその人でいいんですか。幸せにできますか。奥さんとは頑張れないのですか」と念押しし、考えてもらいます。「それでもその人」というなら離婚ですが、そこまでの決心ができない人には「また別の人を見つければ」と言い、考え直してもらうのだそうです。(勝田敏彦)

変えられるのは自分だけ 「家族のためのADRセンター 離婚テラス」代表 小泉 道子さん

 「家族のためのADRセンター 離婚テラス」は、ADR(裁判外紛争解決手続き)と呼ばれる、専門家が仲裁して話し合いで解決する制度を用いて、夫婦関係の相談に応じています。代表の小泉道子さん(行政書士)に離婚をめぐる課題を聞きました。

   ◆

 離婚に関する疑問や悩みには、法的な要素と心理的な要素が混在しています。しかし、その双方に応えられる相談窓口は多くありません。どうやって離婚するのか、何を決めればいいのかといったことが分からず、前に進めずに我慢している人もいます。

 ADRは、裁判によらずに民事上のトラブルを解決する制度です。家庭裁判所での離婚調停は時間がかかり、弁護士を雇うとなれば費用も高額です。ADRは裁判所よりも敷居が低く、メールやビデオ通話での調停も可能なため、短期間で解決することができます。法務省の認証を得たADR機関の仲裁であれば更に安心です。

 当センターでは昨年の新規の取扱件数が前年から倍増し、100件を超えました。夫婦問題のADRはまだ広く知られていませんが、潜在的なニーズはあると感じています。

 私がよくアドバイスするのは「相手は変えられない。変われるのは自分だけ」ということです。

 相手に自分の気持ちを分かって欲しい、相手のここを直して欲しいと訴える人が少なくありませんが、互いにそう思うのなら、相手の気持ちを分かることはできず、どちらも変わらない。相手は変えられないと覚悟した上で、自分が変われるかどうかです。

 また、男性が外で働き、女性が家事育児を担うといった形で家庭内の男女の役割分担が固定化していると、離婚するときに問題になります。仕事から離れていた女性は収入を得る道が閉ざされ、お金のためだけに結婚にしがみつかざるを得ない状況になりがちです。一方、日本では離婚時の親権者の大半が女性であり、その場合男性は離婚で子供との絆を失います。

 これは離婚の問題というより結婚の問題。男女が対等に役割分担し、対等に話し合う土台がありますか。そうであれば万が一のときの「いい離婚」につながります。

 日本人は簡単には離婚しませんが、結婚相手から尊厳を傷つけられるなど、どう考えても幸せではない状態で我慢している人がたくさんいます。現状に我慢すればもっと悪い状況を避けられるかもしれませんが、同時にもっと幸せになれるかもしれない選択肢も捨てていることになります。(聞き手・村井七緒子)

29年の重み 性の煩悩が邪魔

 朝日新聞デジタルのフォーラムアンケートに寄せられた声の一部をご紹介します。

●別居して初めて妻を理解

 今年で銀婚を迎えますが、私の思いやりのなさが災いして現在別居中です。別居して初めて家族の大事さ、今までの妻の心の痛みを理解することができました。自分の思いだけで満足せず、パートナーの立場になって場面場面で考えることができていたらと後悔しています。今はただただ私のできることを家族にしたいと思っております。(宮城県・50代男性)

●性別役割分担マインド捨てて

 結婚して8年になります。夫の存在は結婚当初は恋人に近く、自分をよく見せたい気持ちが強かったけど、一緒に過ごす時間が増えるほどに「パートナー」という言葉がしっくりくるようになりました。家計の面でも家事育児の面でも、つねに対等の精神で話し合える彼を信頼しています。私は今の夫とずっとパートナーでいたいと思っていますが、結婚したら嫌なことがあっても我慢して添い遂げるべきだとは思わない。離婚の自由を得るためにも、性別役割分担のマインドを捨て去ることが欠かせないと思います。(東京都・30代女性)

●世界で一番大事な我が子

 結婚したときは当然夫がパートナーだと認識していたが、子供を産んだら世界で一番我が子が大事な存在になった。全身全霊で産み育てた我が子がかわいすぎるあまり、子離れできず困っているが、基本的に母親は皆子離れに苦しむものだと思う。だが、死ぬほど苦しんで産んだ我が子を簡単には手放せないのは仕方ないことだ。将来は同居あるいは近居したいが、どの母親も口に出さずとも多かれ少なかれ皆そう思っていると思う。楽に子離れできる特効薬でもあったらいいのにな。(神奈川県・40代女性)

●結婚生活29年の蓄積大

 今春、互いの仕事で双方国内単身赴任(要するに成人の子も含めた家族離散)となっても、それまでの2人のあうんの関係で、スマホも使いコミュニケーションが取れるのはいい時代。結婚2年目で日米別居で、手紙をひたすら書いてたのが懐かしいけど。やはり、29年の結婚生活の蓄積は大きい。パートナーとは、毎日の蓄積が大事で、すぐに結果を求めてはいけないと実感。(宮城県・60代男性)

●とくに男は性が邪魔する

 お互い尊敬するに足る相手であるなら、添い遂げられれば良いとは思います。しかし、生身の人間(とくに男性というものは)自己の中にある煩悩というか、性が邪魔をする。そのため、もがき苦しむことになる。なかなか、悟りを開けないというか、開けないからこそ、そこに生きることの本質がある、と考える。(大阪府・70代男性)

●夫婦はしょせん他人と実感

 子どもたちが自立し、夫婦2人の生活になると話題もなくなり本当につまらない時間が増える。夫婦はしょせん他人なのだと実感する。外国映画を見ていると夫婦関係が日本とは明らかに違う。正しく2人はパートナー。お互いの生き方を尊重し、長年培った信頼関係がうかがえる。私が寝込んだらまず、食事の心配をする夫はパートナーではない。(兵庫県・50代女性)

●性的関係なく子が巣立つまで

 夫と10年ほど前から関係を解消していますが、子供が2人いるので教育上と経済的な理由で離婚も別居もしていません。彼と性的な関係がないことは夫婦でいる上では苦痛ですが、考え方もあっているしお互いのことは尊敬できるので、子供が巣立つまではとてもいいパートナーだと思っています。ただ、子供が巣立った後は一緒に生きていく上で楽しい人とパートナーを組みたいです。(海外・40代女性)

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1 Response to "憎くて大切な人生のパートナー 関係、考え直す時とは - 朝日新聞"

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